国が推進している「内装の木質化」によって、オフィス環境に木材を取り入れる動きが活発になっています。家具や内装に無垢材を導入したいけれど、円安やインフレによる価格の高騰で手を出しづらいという方におすすめなのが、突板(つきいた)貼りです。今回は、突板貼りの魅力とお手入れ方法、オフィス導入事例などをご紹介します。オフィス環境をSDGsや木質化対応にしたい方は、ぜひ参考にしてください。

突板貼りとその魅力

木材 ヒノキ

突板貼りは、シート状に薄くスライスした天然木をベニヤ板や集成材などの合板の表面に貼り付けた建材です。一目見ただけでは無垢材の家具と見分けがつかないくらい、木の質感と風合いが感じられます。

突板貼りとは: 基本的な知識

突板貼りは、価値の高い天然木を有効活用するために生まれた技術で、0.2~2.0mm程度にスライスされたシート状の天然木を表面に貼り付け、塗装が施されています。木目や色の美しい天然木が用いられることが多いのですが、使われている木材は少量です。

突板貼りのメリットとデメリット

突板貼りのメリットとして、木目や質感が無垢材とほとんど変わらないのにもかかわらず、無垢材と比べるとリーズナブルで価格が手ごろな点が挙げられます。同じ木材から木目や色が均一な突板を大量に取り出せるとあって、オフィスに同じ家具を大量にそろえる場合に有効です。

さらに、スライス建材なので軽量で運びやすく、温度や湿度による伸縮が少ないため、無垢材と比べると反りなどが起こりにくいのも特長です。

一方、デメリットは表面だけが天然木なので、傷が付くと下地の合板が見えてしまうことがあり、使い方によっては、多少の反りが生じたり日焼けによって変色することもある点です。

突板の種類:アッシュ、ウォールナット、オークなど

突板貼りには、アッシュ、ウォールナット、オークなどといった希少な天然木が使われる場合があります。世界三大銘木の一つであるウォールナットの突板貼りを、オフィスの家具や内装に取り入れるとグレードがアップします。

希少価値の高い天然木や、珍しい木目や模様のある木材をより身近に楽しむことができるのが突板貼りの最大の魅力といえるでしょう。

突板貼りの手入れとメンテナンス

突板貼りはミリ単位にスライスした天然木を表面に貼っているため、傷や凹みが付くと、ベニヤ板などが露出して不格好になります。突板貼りの手入れとメンテナンスを行う際の注意点を見ていきましょう。

ウレタン塗装とオイル塗装: どちらを選ぶべきか

突板貼りは修復が難しいため、傷が付かないように塗装を施すのが一般的です。塗装方法には、ウレタン塗装とオイル塗装があります。

ウレタン塗装は、ウレタン樹脂を木目に埋めるようにコーティングするため、傷や水、熱にも強くなります。ウレタン塗装を施せば、定期的なメンテナンスも不要で、家具を長持ちさせることができるのですが、ウレタン膜に表面が覆われてしまうため、天然木本来の質感を感じにくくなるのが欠点です。

傷対策より天然木の質感を重視したい場合、使い込んだ風合いを出したい場合は、オイル塗装が適しています。オイル塗装だと、天然木の表面をオイルの薄い膜で保護してくれますが、水拭きをしたり、日常的に使っていたりするとオイルが抜けることがあるため、定期的にオイルを塗るメンテナンスが必要です。

突板のメンテナンス: ウォールナット突板の手入れ方法

ウォールナット突板は、高級感を演出できるだけでなく、合板に緩衝材を入れると、防音・遮音対策を施した突板フローリングとして使うことができます。

突板は掃除が簡単で、水拭きでほとんどの汚れを落とすことが可能です。汚れがひどい場合は、中性洗剤を使い、使用後は水気が残らないよう乾拭きしてください。

オイル塗装の場合、1年に1度の目安でワックスがけを行い、表面の塗膜を補います。ウレタン塗装の場合、ワックスがけは必要ありません。

突板の修復と補修: テーブルやダイニングセットのケア

突板は傷や凹みに弱く、一度深い傷ができて合板が見えてしまうと、自宅で修復や補修をすることは難しく、業者に依頼することになります。傷ができないように、ウレタン塗装を施し、ビニールクロスをかけておくのがよいでしょう。

オフィス環境での突板貼りの活用 

シェアオフィス

オフィス環境に木材を使うと、ストレスを軽減しながら仕事に集中できる環境を整えることができます。最近の『ウッドショック』の影響もあって、オフィスで使う家具や内装を全て無垢材にすると高額になるため、適材適所で突板貼りを活用するのがおすすめです。

オフィス家具と突板: ダイニングテーブル、デスクなど

ダイニングテーブルやデスクなど、モノを置いたり触れたりする機会が多く、傷が付きやすいオフィス家具には無垢材が向いているのですが、安価におさめたい場合は、ウレタン塗装を施した突板がおすすめです。

収納棚やパーテーションなど、傷が付く機会が少ない家具に突板を使うと、平面の面積が広いため全体的に落ち着いた空間を作ることが可能です。

リモートワーク時代のオフィス環境整備

国が「木質化」を推進していることもあって、近年、オフィス環境に植物と木材を取り入れる内装がトレンドになっています。植物と木のオフィス環境はSDGsの精神にも合致しており、人に優しいだけでなく、リラックスしながら仕事に集中できる環境を実現しています。

突板貼りを活用したオフィス環境の事例紹介

東京都内のIT系企業のオフィスは、フロア中央のリフレッシュルームに、オーク突板を用いたハイカウンターを設け、カフェ・バーのようにしました。特注の大きな丸テーブルもオーク突板で、照明も暗くして落ち着いた雰囲気を演出しています。仕事の合間にはホッと一息つける場所が、仕事が終わると、お酒や食べ物を持ち寄って飲み会が開かれる開放的な空間に様変わりします。

ワークスペースのデスクは、背板と側板がパーテーションになるようデザインされています。パーテーションはウォールナット突板で高級感ある仕上がりになりました。オフィスの家具の多くは突板貼りなので、予算内に収まったと経営陣にも好評です。

突板貼りのDIYガイド

突板貼りのDIYの方法をまとめました。突板シートはECサイトを利用すると、大きさや材質など、さまざまなタイプが選べます。

突板貼りの基本的な工程

まずは、突板シート、貼り付ける対象の木材(基材)、アイロン、霧吹き、接着剤、ヘラ、サンドペーパー240番、カッターナイフなどを用意します。

霧吹きで湿らせた突板を伸ばした後、基材、突板の順に接着剤を塗ります。接着剤は半乾きの状態で、基材と突板を貼り合わせ、アイロンで加熱してください。80度以上に加熱しないと接着しないため、焦げないよう絶えずアイロンを動かしながら、しっかりと加熱しましょう。

粗熱が取れたら接着完了ですが、半日程度は放置して落ち着かせます。基材からはみ出ている余分な突板をカッターナイフやサンドペーパーで落とすと、突板貼りの作業は完了です。

ウレタン塗装やオイル塗装のDIY方法

突板シートを基材に貼り合わせた後は仕上げ塗装(保護塗装)が必要です。木工用の塗料であればどんな突板貼りにも使えます。

ウレタン塗装でも、オイル塗装でも、DIYの基本的な流れは同じで、サンドペーパーで突板シートの表面を磨いた後、好みの色になるまで塗り、余分な塗料を拭き取る、この作業を何度も繰り返します。

詳細な塗装方法は、塗料メーカーの説明書に従ってください。

突板シートの選び方と貼り方

突板シートは木目の美しさや好みで選ぶのが一番です。突板シートのECサイトには、天然木の特徴などを紹介したページがあり、それを参考に選びましょう。

突板シートは貼り合わせる基材よりも、一回り大きなサイズを用意し、突板の木目と基材の木目の向きをできるだけ合わせて貼るのがおすすめです。

まとめ

突板貼りは、シート状に薄くスライスした天然木を合板の表面に貼り付けた建材で、一目見ただけでは無垢材の家具と見分けがつかないほどです。リーズナブルな価格が魅力で、オフィス環境を近年トレンドの「木質化」にする際は、無垢材だけでは高くなるため、適材適所に突板貼りを活用することをおすすめします。

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