ABWという言葉をご存じでしょうか。これは、現代のオフィス環境における新しい働き方のアプローチです。従来の固定された席割り、レイアウトから脱却し、柔軟性と効率性を高める新しい働き方のスタイルとして注目されるようになりました。この記事では、ABWの基本的な知識と、従来のデスク配置との違いについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ABW(活動基盤型勤務)の概念とその背景
ABWとは、Activity Based Workingの略で、直訳すると活動基盤型勤務のことです。仕事の内容に合わせ、働く場所を自由に選択する働き方を意味します。リモートワークやフリーアドレスとの違いなど、ABWの基礎知識について見ていきましょう。
ABWとは何か:基本的な定義
ABWとは、活動や業務内容に基づいて従業員が自由に作業スペースを選択できる働き方のコンセプトです。従来の固定化されたデスク割りではなく、個々の業務に合わせて最適な場所で作業を行う特徴があります。
これだけだとリモートワークやフリーアドレスと同じ意味に思えるかもしれませんが、仕事へのアプローチに違いがあります。ABWは、オフィス内での作業環境を従業員の活動や業務内容に基づき、最適化を図り効率的にするのが目的です。リモートワークは場所や時間に捉われない柔軟な働き方で、フリーアドレスはコミュニケーションとコラボレーションを促進に特化しています。
働き方の変革という点では共通する3つの単語ですが、着目・重視するアプローチ部分がそれぞれの相違点です。ABWは、あくまでオフィス内での働き方をより効率的にすることを重視します。
ABWが生まれた背景:リモートワークとフリーアドレスの関連性
ABWには、働き方の変化に伴うオフィス環境へのアプローチの進化と共に誕生した背景があります。
近年の働き方改革や新型感染症の影響により、従業員がオフィスに出勤せず在宅によるリモートワークの普及から、従来のデスク割りは効率的ではなくなりました。働き方の多様化による柔軟な働き方が求められ、固定された席にこだわることなく、自由に作業スペースを選択できる段階に入ったことが大きいでしょう。この点が、フリーアドレスやABWの導入のきっかけです。
また、従業員同士のコミュニケーションが重要視されるようになり、オフィス内での席割りがコラボレーションを促進するための効果的なアプローチとして、ABWの誕生を後押ししました。従業員の活動や業務内容に基づき、柔軟なオフィス環境を提供するアプローチの考案から、リモートワークやフリーアドレスと共に現在ではABWの導入が支持されています。
ABWの主な活動領域:ABWの10の活動
ABWには様々な活動領域が存在し、オフィスの従業員は選択しながら作業を行っています。
ABWの10の活動とは、オランダのヴェルデホーエン社の研究に基づいて10個に分類された従業員の活動の考え方のことです。10個の活動は、それぞれワークプレイスの人数・活動内容・特徴で分けられます。
まず、1人のワークプレイスでは、高集中・コワーク・電話/WEB会議の3つに分類します。2人のワークプレイスでは、2人作業と対話の2つに分類。3人以上のワークプレイスでは、アイデア出し・情報整理・知識共有の3つです。それ以外に、リチャージと専門作業の2つに分けた合計10個の活動指針があります。リチャージとは、休憩やリフレッシュのことを指す言葉です。
これらの活動領域は、従業員が業務や作業内容に合わせ、柔軟に選択できるように設計されています。ABWでは、個々のニーズに合わせた柔軟な働き方をサポートし、生産性と満足度の向上を目指し、このように指針を立てているのです。
ABWのメリットと課題
ABWには、明確なメリットがありますが、導入への課題も混在しています。ここでは、ABWのメリットと課題を見ていきましょう。
ABW導入の主なメリット
ABWを導入することによって、作業スペースの自由選択と業務に応じた最適環境での作業が実現できます。ニーズに合わせた柔軟な働き方が可能となり、生産性の向上に期待できるでしょう。ABWは従業員の業務内容や 働き方に合わせ、最適化することを目的とした概念です。オフィスにABWを取り入れることで、アイデアの交換や情報の共有などのグループ間のコミュニケーションがスムーズに行えるでしょう。
また、作業環境の柔軟性が格段に向上したことにより、従業員のワークライフバランス改善が見込めます。自宅やカフェなどでの作業が容易になることで、通勤時間の削減や家庭との調和が可能。不要なスペースの削減により、オフィス運営のコスト削減にも寄与するなど、ABWによって様々な恩恵を得られるでしょう。
ABW導入の主なデメリットと課題
まずABWの導入にあたり、徹底的な計画とサポートは必須。従業員の意見を十分に反映させ、ニーズへの的確なアプローチが重要です。
例えば、コミュニケーションの向上は、必ずしもすべての従業員に当てはまるとは限りません。フリーアドレスや柔軟な作業環境によって、かえって従業員同士のコミュニケーションが難しくなる場合があります。席が固定されていないため、連絡を取りづらくなったり、環境変化への適応に時間がかかるケースも考えられるでしょう。
また、作業に必要な情報やツールが手元にないことで、作業効率の低下などが懸念されます。そのほかにもプライバシーの確保や集中して作業する環境の構築、適切なワークライフバランスの提供なども必要です。
新しい働き方や文化の変革が、組織全体に大きな影響を与えるのは当然です。一部の従業員にとって、新しい働き方への適応に時間がかかったり、困難であったりするケースもあり得ます。いかにしてABWへのスムーズな移行を推進するかが課題です。
ABWを成功させるためのステップと事例
実際にABWを成功させるためにはどのように進めるべきなのでしょうか。成功させるためのステップと合わせ、国内外での成功事例をご紹介します。
ABW導入のステップ
ABWを導入するための一般的なステップを解説します。
まず、ABWへの取り組みに対し、専門家や異なる部門の担当者を中心にプロジェクトチームを結成するのが望ましいです。闇雲にABWを導入して、導入の透明性が失われるのは避けなければなりません。
次にオフィスのニーズを分析し、綿密な導入計画を立てます。従業員のニーズを理解するためにアンケートなどを実施し、どのような活動領域が求められているか分析して適切なオフィスデザインを設計しましょう。
ABWの導入にあたっては、従業員へのコミュニケーションとトレーニングが不可欠です。導入の理由やメリット、活動領域の使い方を理解してもらい、ABWの体制に適応していくためのトレーニングを実施しましょう。同時にABW導入に必要な設備や家具の選定し、ツールの使用なども説明していくのが望ましいです。
ABWを導入した後は、経過後のフィードバックを積極的に収集してください。フィードバックから問題点や改善点を把握し、定期的な評価を行ってABW環境を改善していくことが大切です。その後の従業員の反応や業務効率などを注視しながら、必要に応じた調整を行って継続的に改善していきましょう。
ABWの成功事例:国内外からの導入事例
ABWの成功事例として、国内外の導入事例をご紹介します。
野村不動産株式会社 では、本社オフィスをABWにリニューアルしたことでフリーアドレスを導入し、従業員が自由に作業スペースを選択できるようにしています。コラボレーションスペースやリラックススペースの拡充に力を入れ、新しい働き方を定着させたことで従業員の満足度と生産性の向上の実現を成功させた事例です。国内ではほかにもKDDIや日本IBMがABWを導入し、従業員の柔軟な働き方を支援することで、創造性の促進を図った新たなアイデアの創出が推進されています。
国外では、MicrosoftやGoogleが世界的にも有名で、オフィスをABWにリニューアルしたことで従業員同士のコミュニケーション活発化に成功した事例です。イノベーションの加速に成功した事例として、オフィスのフリーアドレスやコラボレーションスペースの導入に一躍注目が集まりました。
これからのABW:ABWの次とは?
これからのABWは、新たな働き方の提案やさらなる進化が期待されています。ABWの次の段階では、より進歩したテクノロジーの活用が求められると予想されるでしょう。例えば、5GネットワークやIoT技術を活用し、作業環境の高度な最適化設定を行うなどが考えられています。
これらの技術を応用し、遠隔地のメンバーとリアルタイムでのシームレスなコミュニケーションを図り、より高度なツールやシステムが導入される可能性が高いです。より進化したABWが実現されることで、新たなテクノロジーやワークスタイルの普及、ABWの多様な適用化が予想されます。
まとめ:ABWの理解とその活用
ABWとは、従業員が異なる活動に応じて適切な作業空間を選択できる働き方のスタイルです。導入を推し進めることによって、オフィス内のモチベーションや生産性を向上させると同時に、組織のイノベーション力を高めることが期待されます。ただし、ABWを導入する際には組織の特性や文化に合わせ、従業員と組織のニーズをバランス良く満たさなければなりません。そのためにも、一人ひとりの理解を得て、オフィスの改革に最適化していく努力が必要です。
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