家具と建築は、人が住む居住空間を構成する重要な要素です。家具と建築はお互いに影響を与え合い、業界の発展に寄与しあう密接な関係性を構築していると言えるでしょう。この記事では、家具と建築の融合によって、生まれる影響や相乗効果、家具を選ぶうえで重要な要素と家具などについて解説します。国際的に見た家具デザインの世界や未来への展望、伝統と文化などの家具にまつわる考察も行いますので、ぜひ参考にしてください。

家具と建築の融合:基本原則とデザイン

家具は日常生活で使用する必需品のほか、インテリアや住みやすい居住空間の構築に必要不可欠な要素です。充実したライフスタイルを送るためには、家具と建築は同じものと考えるべきでしょう。家具と建築が融合したデザインについて解説します。

家具と建築のデザイン思考の共通点

家具と建築はそれぞれ別の領域と思われがちですが、デザインの観点では共通点が非常に多い分野です。例えば、カラーリングでは、選んだ色によって外観や印象がガラッと変わるでしょう。また、周囲の環境に合わせたり統一性、または多様性を持たせたりするなど、デザインには無限の可能性があります。デザイン思考の見方からは、コンセプトと目的を持って設計する点で家具も建築も共通しているのです。

家具と建築の相互作用の例

家具と建築の共通点に着目した場合、人が生活する空間を豊かにする関係性であることが理解できます。人が毎日の生活を快適に送るには何が必要かを考えた場合、機能性・利便性・デザイン性・調和などさまざまな要素が思い浮かぶでしょう。例えば、建物の一部と家具が一体化した「造り付け」は機能性と利便性、空間デザインを活かした設計です。居住間の構造やカラーリングが雰囲気に作用し、自分だけのリラックス空間を演出できます。家具と建築の相互作用により、生活する上での効率面や心理面にも影響を与えるのです。

建築デザインに影響を与える家具の選択

人が生活する場所である空間では、建築と家具は絶対的な関係性にあります。そのため、建築デザインと家具には調和が必要であり、建物の設計とそこに住む人や設置する家具を含めてのイメージが必要です。例えば、和室に西洋家具をそろえた場面を想像すれば違和感を覚えるでしょう。もちろん、インテリアデザインにはあえてミスマッチを試みるケースもありますが、そのような場合は和風モダンやアレンジを加えた「和洋折衷建築」というしっかりしたコンセプトが設計されています。建築デザインのコンセプトが決定されていれば、色やデザイン、機能性などの生活に良い影響を与えるための家具選びが重要です。

家具デザイナーと建築家

家具と建築によるより良い空間づくりには、居住空間をデザインする家具デザイナーと建築家のスタイルや考え方が大きく影響します。ここでは、両者の協働やお互いが影響を受ける事柄について見ていきましょう。

家具デザイナーと建築家の協働の実例

協働とは、同じ目的を持つ者同士がお互いに責任や役割を分担して成果を共有する意味の言葉です。近年の建築プロジェクトでは、住宅の建築に建築家と他業種の専門家が協働するケースが増えている報告があります。建築という目的のために多くの専門家がつながり、設計意図に従って実現を果たす実例も数多く報告されてきました。例えば、東京スカイツリーのプロジェクトでは、建築家とインテリアデザイナーなどの分野の専門家たちが協働プロジェクトを実施した例が有名です。このようにそれぞれが職能を活かした協働により、高いレベルでの建築・建造の成功例が今後も増えることが予想されています。

家具デザインの影響を受ける建築作品

家具デザインの影響を受ける建築作品として、チャールズ&レイ・イームズ夫妻の「イームズハウス」が挙げられます。イームズチェアの生みの親として知られる夫妻は、プライウッドの家具開発や研究で培った技術と知識を自邸の建築に活用しました。既製の材料だけで建造された住居とスタジオは、広大な自然の法則という夫妻のコンセプトで建築されたものです。工業材料のみで作られた幾何学的形状のシンプルな家屋は、周囲の自然に溶け込んだ見事な建築作品として現存しています。

建築的思考を取り入れた家具デザイン

世界では家具デザインからの影響を大きく受けた建築作品の事例があり、デンマークのアルネ・ヤコブセンは特に有名です。ヤコブセンは著名な建築家兼デザイナーとして知られ、家具やインテリアの細部にこだわった「トータルデザイン」を特徴としていました。オックスフォード大学はヤコブセンが設計建築した建造物で、大学で使用されている備品などの設計も行っています。39あるカレッジの中の一つ、セント・キャサリンズ・カレッジでは、ヤコブセンによってオックスフォード大学のモダンな雰囲気をイメージしたインテリアやカトラリーを製作。歴史ある建物の構造美や機能美にこだわり、計算されつくしたデザインは傑作と呼ぶにふさわしいでしょう。

家具選びと建築デザインの統合

調和の取れた居住空間の実現には、家具選びと建築デザインの統合が欠かせません。家具選びと建築デザインの統合に必要なプロセスとポイントについて、詳しく解説します。

家具選びのプロセスと建築設計

家具選びは住居を快適に過ごすために重要な要素のため、できるだけ早い段階で始めたほうが良いでしょう。住居の建築設計が完了し、施工が始まる少し前ごろが家具選びに良いタイミングです。あまり早すぎても実際の建築設計と差異がある場合、設置場所に困る恐れがあります。竣工してからでは家具がそろっていないケースが想定されるため、竣工までに家具選びを済ませておくのがベストです。また、既製品の家具だとサイズが住居に合わない可能性もあります。余裕があればオーダーメイドで、住居にマッチした家具を選びましょう。

建築的視点からの家具の選択

建築家の観点では家具やインテリアは、建築の一部と考えている方が多い傾向です。家具やインテリアも建築の部品と考え、家具選びと並行して建築設計を行うことが想定されます。しかし、建物は周囲の環境や土地面積の都合で、住居空間が狭くなってしまう可能性があるため注意が必要です。プロダクトに配慮した家具の選択を優先するケースも少なくありません。デザインの専門家である建築家の多くは、スペースの確保と家具と空間のコンセプトの調和を大切にしています。そのため、建築的視点では快適な生活につながる家具選びが重要です。

家具と建築の調和を達成するためのアイデア

家具と建築の調和のためには、コンセプト・デザイン・統一性が必要です。ナチュラルテイストの居住空間なら、天然素材を使用した建築材や天然木などを使用する、土地や風土をテーマにしたアイデアなどが挙げられるでしょう。一目見てイメージできるデザインは、空間の調和が取れていることの証明でもあります。ライフスタイルに合わせてコンセプトを決め、空間にバランスを持たせるイメージが大切です。

家具と建築の相乗効果を最大化する方法

どの分野においても、相乗効果(シナジー)を生み出すにはお互いの強みを最大限に引き出すことが大切です。家具と建築であれば、カラーリングや機能、家具と建築のフォルムやテイスト、素材などテーマに一貫性を持たせて統一するのが相乗効果を最大化する方法と言えるでしょう。北欧モダンをテーマにするなら、建物の外観から内装、家具やインテリアに至るまで北欧風で統一する、カントリー調なら牧歌的なイメージのデザインを取り入れるのがおすすめです。価値観は個人によって異なるので、これが絶対というわけではありません。一般的には、テーマに統一性を持たせることによって相乗効果が発揮されると考えられています。

日本と世界の家具デザインのトレンド

ここでは、日本と世界で注目されている家具デザインのトレンドについて解説しますので、家具選びの参考にしてください。

日本の伝統と現代建築の融合

日本の伝統で思い浮かべた場合、大正や明治のモダンスタイルや寺院や神社・仏閣、京都の町などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。あるいは、畳やふすま、障子なども昔の日本の一般家庭というイメージがあるかもしれません。日本の伝統家屋は景色や情緒を重んじており、機能的な現代建築と比べると不便に感じてしまうことがあります。しかし、日本の伝統をテーマにした建築デザインは海外で人気を博し、SNSで公開している方も少なくありません。技術が進歩した現代では建築技術に日本の伝統を取り入れ、機能美とも称賛されています。日本の伝統と現代建築が融合することにより、独自の世界観と魅力を構築していると言えるでしょう。

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世界のトレンドとデザイナーズ家具の影響

海外で日本の伝統が称賛されるように、海外のトレンドもまた世界中や日本国内でも注目されています。世界的なデザイナーやブランドの家具はロングセラーとして世界中で販売されていますが、デザインにおいては北欧のインテリアスタイルをイメージする方が多いかもしれません。デンマークやスウェーデンは世界的なデザイナーを数多く輩出し、日本でも北欧ブーム以降はすっかり定着しています。シンプルでナチュラルな風合いは、日本の伝統と共通点の多いポイントです。また、柔らかな色合いがインテリアになじみ、近年のナチュラルブームに非常にマッチしています。イタリアのカッシーナでもナチュラルデザインの家具は人気が高く、影響を受けているデザイナーズ家具は今後も増え続けそうです。

家具デザインの国際的な展望

家具デザインはデザイナーや国のスタイルごとに異なり、作り手の思想や個性もまったく同じではありません。世界のデザイナーやクライアントとの活動・協働によって、新たな技術やアイデアの獲得を目指すブランドメーカーやデザイナーが続々と現れています。日本の木工家具メーカー「マルニ木工」では、世界で活躍するデザイナーや建築家を起用したプロジェクトを立ち上げ、家具業界初のグローバルブランドとして成功を収めました。このように今後も価値観やメッセージを世界に発信し、枠組みを超えて良いものを広めようとする企業やデザイナーが現れ、家具デザインの技術革新が予想されるでしょう。

異文化の建築と家具デザインの組み合わせ

一見ミスマッチに見える異文化同士の組み合わせですが、和洋折衷建築などの成功例があるようにバランスによって絶妙な美観の獲得が可能です。それぞれの文化とスタイルの組み合わせによって、技術と伝統の融合が独特の魅力を生み出す可能性を広げます。異文化の活用によって新たな視点と発見につながり、独自の雰囲気と空間演出への昇華も実現できるでしょう。異文化との組み合わせは漠然と行うのではなく、文化への理解と尊重が欠かせません。異文化への敬意と配慮を忘れず、家具デザインに組み込むことで新たな調和空間を演出します。

家具と建築の未来

家具と建築の関係性は、居住空間を構成する密接なつながりです。生活環境に関わる家具と建築の未来の展望について見ていきましょう。

新しい材料と製造技術の導入

近代の技術の進歩は目覚ましく、時代とともに新たな発見や開発が行われています。新素材の開発や成功によって革新が起こり、従来とは異なる新しい製造技術の導入も考えられるでしょう。最近では石油や化学素材の代用品として、自然由来のテキスタイルやヴィーガンレザーなどが登場しました。テクノロジーの進歩によって、近い将来の新しい家具の登場が待望されています。

家具デザインのサステナビリティと環境配慮

世界的な環境保全活動の活発化により、家具デザインの業界でもSDGsの理念を掲げるサステナブル家具の開発が行われています。簡単に言うと、環境に配慮した素材を使用し長く使えてリサイクルが可能な家具デザインの考え方です。前項で解説した新素材やエコ素材を使用し、環境に優しい家具デザインの長期的持続を目指す活動が浸透されつつあります。使い捨てのない修理可能で長く使える家具が量産されることで、コストを抑えることが可能です。長く使えれば、それだけ愛着を持って家具を使えるようにもなるでしょう。

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デジタル化と家具デザインの未来

現代のデザイン業界では、CGを取り入れた3Dモデリングやシミュレーターによる3次元化が主流です。デジタル家具や建築設計の現場では、制作した設計図をコンピューターにスキャンし、データ化したり直接パソコン上で作成するケースがあります。家具デザインや設置場所をデータ化することで、予想図をシミュレートして精密なデザインと設置が可能です。正確性や生産性を飛躍的に向上させ、効率化を推し進める家具デザインのデジタル化は、今後さらなる発展が予想されるでしょう。

まとめ

家具と建築は密接な関係にあり、快適な居住空間の構築にはお互いの調和が不可欠です。時代の流れと技術の進歩により、デザインの考えや在り方も日々変化していきます。多様性やサステナビリティが注目されている現代では、家具デザインのトレンドや考え方が未来ではまったく異なる可能性もあるのです。未来の技術で作られる家具や建築、家具デザインの考えがどのような融合を果たすのか注視してみてください。