建物の建築には多額の費用と時間が必要ですが、建築技術の発達により、建築費用削減と工期短縮が可能になりました。その建築技術の一つがモジュール建築です。この記事では、モジュール建築の概念、実用性とメリット、将来性などについて詳しく解説します。

モジュール建築の基本と概念

最初に、モジュール建築に関する基礎知識として、モジュール建築の概念、種類とそれぞれの特徴、価格、日本国内での事例をご紹介します。

モジュール建築とは?

工場で部材を製造し、現場では部材の組み立てのみ行います。いわゆるプレハブ建築であり、簡単で安く建てられるのがメリットです。さらに近年は、技術力の進化により耐久性に優れたモジュール建築物も多く建設されています。

モジュール建築の種類と特徴

モジュール建築の種類は4種類あります。それぞれの特徴は次の通りです。

鉄骨構造
軽量鉄骨を採用し、骨組みは柱と梁をブレースで組み合わせて作ります。

木質構造
壁、床、天井を木製のパネルで構成します。軸組方式、軸組パネル方式、パネル方式から選択することが可能です。

ユニット構造
ボルトや溶接などで鉄骨の箱型のフレームを作り、コンクリート、セラミック系などのパネル板で作成した箱型ユニットを組み立てます。壁や床だけでなく、キッチンや浴槽のような設備も工場で取り付けられるのが特徴です。

コンクリート構造
組み立て方は木質構造と同じで、壁、床、天井を鉄筋入りプレキャストコンクリートパネルで構成します。

モジュール建築の価格とコスト効率

モジュール建築にかかる費用の内訳は、本体部材費、基礎工事費用、外構工事費、内装外装工事費用、設備費などです。既に規格が決まっていて現場で組み立てるだけで済むため、作業の効率化を図れます。工期を短縮でき、人件費も減らせるためコスト削減にも効果的。モジュール建築の住宅を建てた場合の坪単価は、50~150万円程度です。

日本におけるモジュール建築の例と展開

日本でよく知られているモジュール建築物の例は、建物が統一されているコンビニエンスストアやチェーン店の店舗、ショールーム、トランクルーム、倉庫などです。現在は、庁舎、工場、教育施設、医療施設、福祉施設などにも採用されており、今後もモジュール建築の増加が見込まれています。

モジュール建築の実用性とメリット

モジュール建築のメリットとして、設計の自由度が高い点施工速度が早い点などが挙げられます。

設計の自由度とモジュール建築の柔軟性

モジュール建築は新しいモジュールを追加するだけで建物の容量や機能を搭載できるため、柔軟性には優れています。建物の変更がしやすいモジュール建築は、用途が変わりやすい建築物に適した建築様式です。

ただし、モジュール建築は規格が決まっているため、デザインの自由度は高くありません

モジュール建築の持続可能性とエコフレンドリーな側面

簡単に組み立てられるだけでなく、解体して再度組み立てることも可能です。通常の建物は解体すると、産業廃棄物として処分するだけですが、モジュール建築は再利用が可能なため、持続可能性とエコフレンドリーな側面も兼ね備えています。

産業廃棄物は処分に費用がかかるだけでなく、不法投棄が問題になっており、モジュール建築の導入拡大は環境保全の観点からもメリットが少なくありません。

モジュール建築の施工速度と効率性

モジュール建築は既に出来上がった部材を組み立てるだけなので、スケジュール管理がしやすく施工速度が早く効率性に優れているのも特徴です。

建物の建築では、設計士、職人、業者など大勢の人が作業を行うため、作業の遅れが大きなトラブルに発展する可能性もあります。また、建築業界では人手不足が問題となっていますが、特殊な技術力を必要としないモジュール建築であれば、施工に従事可能な人材を確保しやすいでしょう。この点でも業務の効率化を図れます。

モジュール建築における住宅設計のトレンド

プレハブ建築協会が発表した報告によると、2022年度モジュール住宅完工戸総数は、12万4980戸で、前年比101.2%、1510戸増加しました。特にZEHのモジュール住宅(戸建て)人気となっており、7年連続で増え続けています。

モジュール建築の技術的側面

モジュール建築の技術的側面に関する知識として、設計基準、デメリット、特徴などをご紹介します。

モジュール建築の寸法と設計基準

モジュールは(module)は、他のものと組み合わせる部品を指し、建築では設計基準となる寸法を意味します。主なモジュールの寸法は次の3つです。

・尺モジュール:910mm
・メーターモジュール:1,000mm
・インチモジュール:1,218mm

日本の建築では、一般的に尺モジュールが採用されます。

ナガワモデルと日本のモジュール建築事例

株式会社ナガワは、モジュール建築をはじめ、システム建築、ユニットハウスなどの事業を展開する企業です。モジュール建築では次の4種類を取り扱っており、工場、倉庫、スポーツ施設、店舗など幅広い建築物に導入されています。

・ネオクレスト(NP-CS):中柱がなく、1階建ての大型倉庫や大型工場に適している
・ネオフィス(NP-OF):中柱あり、2階建てまで対応可能で、事務所や店舗などに適している
・ネオストレージ(NP-ST):中柱あり、2階建てまで対応可能で、車庫や倉庫、倉庫型店舗に適している
・ネオフラット(NP-FL):中柱あり、2階建てまで対応可能、高断熱仕様で、仮設倉庫や防災備蓄庫などに適している

モジュール建築のデメリット

モジュール建築はデザインの自由度が低いため、デザイン性を重視する建物には向いていません。また、モジュール建築では6m間隔で柱を建てるため、デッドスペースができやすく、建物の空間を最大限に活用できないのもデメリットです。

モジュール建築と伝統的建築との比較

日本の伝統的建築は木造軸組み工法で、柱、梁、小屋組み、土台など構成され、軸材料のみを工場で作り、その他の作業は現場で行います。木造軸組み工法は、自由度が高く変更がしやすいため、モジュール建築にはないメリットを得られるでしょう。

一方で、伝統的建築は工期が長く、建築業者によって建材の品質と職人の技術力が異なるため、建物の仕上がりが建築業者によって左右される可能性があります。モジュール建築は出来上がった部材を組み立てるため、均一に仕上げることが可能です。

モジュール建築の未来と展望

モジュール建築の進化により、簡易的な建物というイメージを覆すような建築物も建設されています。最後にモジュール建築の未来と展望を見ていきましょう。

モジュール建築の革新的な設計事例

高層ビルは地震で大きく揺れるため、建築する際には高い耐震性が求められます。モジュール建築の耐震性は、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造より劣るため、従来は高層ビルに不向きとされていました。しかし、現在は、高層ビルにもモジュール建築が取り入れられています。

革新的な設計事例としては、ニューヨーク州ブルックリンのバークレイズ・センター・アリーナのすぐ横に建てられた32階建ての「B2 BKLYNレジデンス棟」です。モジュール建築を採用した世界最大の複合施設で、350世帯が暮らしています。

世界におけるモジュール建築の進化と影響

2022年の世界におけるモジュール建築市場は、約907億9,000万米ドルで、2023~2030年には7.5%以上の成長率が見込まれています。主な要因として考えられるのは、グリーンビルディング・プロジェクト開発および建設投資の増加と、自然環境への意識が高まりにより政府が建設廃棄物の削減に取り組んでいることです。

モジュール建築の未来技術と可能性

日本の建築会社大林組は、建設用3Dプリンターを使って、建築基準法に基づく建物の建設に成功させました。海外では、さらに建設用3DプリンターとAM技術を使ってモジュール建築の移動式住宅の開発が行われています。モジュール建築は他の技術を掛け合わせることが可能なため、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。

設計士としてモジュール建築をどう活用するか

モジュール建築であれば、従来の建築作業を約半分の時間で完了することも可能です。団塊世代の退職により、建築業界はさらなる人手不足が予想されています、モジュール建築を導入すれば人手不足の解決にも役立つでしょう。ただし、モジュール建築にはデメリットもあるため、設計士がモジュール建築を採用する際は、デメリットを十分把握した上でモジュール建築を活用することが重要です。

まとめ

モジュール建築は、既に出来上がった部材を組み立てる工法なので、コスト削減と作業の効率化が図れる点が魅力です。設計の自由度が低く簡易的な建物のイメージが強かったのも事実ですが、今では高層ビルを建築できるほど進化しています。他の技術と併用することでさらなる可能性が生まれるため、モジュール建築を採用した建物は今後さらに増えていくでしょう。