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介護現場で使用される椅子には、利用者に合わせた機能や安全性が欠かせません。では、介護現場で使用される椅子には、一般的な椅子に比べてどのような工夫が施されているのでしょうか。今回は、介護施設用の介護椅子を選ぶポイントについてご紹介します。

介護施設の椅子の基本的な特徴

介護施設で使われる椅子は、利用者をサポートし安全に利用できる機能を備えているのが基本です。介護が必要な高齢者や身障者の利用するものですので、通常の椅子とは違った工夫が見られます。デザイン性より安全性や機能性に重点を置いた作りになっているのが特徴です。

介護施設椅子の主要な役割

介護施設の椅子の主な役割は、加齢や病気・ケガなどで難しくなってしまった日常動作を手助けすることです。利用者が無理なく日常生活を送るためのサポート役として介護用椅子は使用されます。安全に利用者を支える介護用椅子は介助者の負担も軽減することが可能です。

立ち上がり補助やリクライニング機能の重要性

立ち上がり補助は、椅子から立ち上がりやすいよう工夫された機能です。椅子から立ち上がるためには、健康な人が意識している以上に強い力が必要です。握りやすく力をかけやすい肘置きや、沈みすぎず深すぎない座面などの工夫が施されています。

リクライニング機能起き上がるのがつらい利用者の負担を軽減してくれます。テレビや新聞を見やすい角度に調節することもでき、適切な姿勢の維持に役立つでしょう。骨盤が後ろに倒れた「仙骨座り」になってしまうと、骨の変形や床ずれ、誤嚥の原因になりかねません。正しい姿勢を支える椅子を使うことが大切です。

この他にも、座面が傾斜したり、座面の高さが変えられたりといった機能がついているものもあります。

介護保険の適用と椅子の選び方

介護に使われる福祉用具は、保険給付の対象になっているものがあります。一部の介護椅子はレンタル可能になっており、要介護2~5の人が対象です。 

また、「特定福祉用具」に該当するものは毎年10万円を上限として1~3割で購入することが可能です。介護保険が適用される椅子は限られているため、レンタルや購入前によく確認しましょう。介護用の椅子を選ぶ際は機能や耐久性、安全性、コストパフォーマンスなど多角的に検討してください。

介護施設で求められる椅子の特徴

介護施設で求められる椅子には家庭用の介護椅子とは少し違いがあり、例えば以下の点が挙げられます。
● 利用者の身体機能に合った設計
● 安全性の確保
● 清掃しやすさ
● 耐久性とコストパフォーマンス

利用者の身体機能に合った設計

利用者の身体能力は一様ではありません。比較的筋力のある人と、ほとんど力を入れられない人とでは必要な椅子の機能も変わってきます。座面の高さや椅子の種類を利用者に合わせて選びましょう。

安全性の確保

介護施設で使用する椅子に最も必要なのは安全性です。利用者が転倒することなく、安心して使える椅子が求められます。

清掃のしやすさ

介護施設では毎日多くの人が食事をし、そのたびに食べこぼしで椅子に汚れが蓄積していきます。また、色々な人の手が触れるためその度に菌などが付着してしまいかねません。掃除を手軽にできるものだと清潔に保つことができます。

また、重ねて置いておけるスタッキング設計になっていると、使わないときにまとめておくのに便利です。

耐久性とコストパフォーマンス

介護施設では多くの人が椅子を利用するので、簡単には壊れない丈夫さが必要です。ただし、施設では多数の椅子を使用するので、あまり高価なものを買うと購入費用がかさんでしまいます。安くて耐久性に優れ、長持ちする椅子が良いでしょう。

立ち上がり補助

足腰に不安がある人や力を込められない利用者が安心して立ち上がれる安定性は、介護施設の椅子に欠かせません。利用者が立ち上がりやすいことで、転倒の危険性を減らせるだけでなく介助者の負担も軽減できます。

介護用リクライニング

介護の場でリクライニングが必要なのは、正しい姿勢を維持することが利用者の健康に重要な役割を持っているからです。背骨に負担がかかったり、ずり落ちてきてしまったりする座り方にならないよう、リクライニングを調節します。

介護椅子の種類とそれぞれの特徴

介護椅子には主に以下の種類があります。
● リクライニングチェア
● ハイバックチェア
● 車椅子用チェア
● 座椅子

リクライニングチェア

リクライニングチェアは背もたれの角度を調節できる椅子です。段階的にリクライニングできるものと、無段階調節できるものがあります。楽な姿勢をキープしたり、身体を起こしたりするときに便利です。フットレストが付属しており、こちらもリクライニング可能な商品があります。利用者に合わせてより細かい調整ができ、無理ない姿勢を保つことが可能です。

ハイバックチェア

ハイバックチェアは背もたれが高く、首や頭まで支えることのできる椅子です。しっかりと上半身を支えてくれるので、安心して身体を預けることができます。長時間座っても疲れにくく、ゆったりと座ることができるのが特徴です。

車椅子用チェア

車椅子には自走用と介護用の2種類あります。介護用の車椅子は介助者が押して動かす仕組みになっており後輪が小さく、自走用車椅子に比べ軽くコンパクトです。肘掛け跳ね上げ式なら横からの乗り降りもスムーズ。リクライニング機能や足台のスイングアウト機構など使用シーンに合わせて様々な種類と機能があります。

座椅子

座椅子は重心が低く安定感があり、立ち座りを楽にしやすいのが特徴です。肘掛けやリクライニング機能がついているものもあります。座面が回転するタイプもあり、身体の向きを簡単に変えることが可能です。使う目的や場所に合わせて、座面の高さを変えることでより使いやすくなります。

介護施設椅子のレンタルや購入のポイント

介護用椅子はレンタルと購入を選ぶことができ、それぞれメリットがあります。レンタルと購入のポイントを見ていきましょう。

レンタルのメリットと適切な選び方

介護用椅子をレンタルするメリットは、なんといっても費用が抑えられることです。購入すると5万円程度する介助用の車椅子も、レンタルすれば月2,000円程度で済み、さらに保険適用で1~3割程度の負担に抑えられます。

必要な介護用椅子の種類が変わった場合でも、レンタルなら交換が簡単です。最適な介護用椅子はどれか、相談して聞くこともできます。定期的なメンテナンスをしてもらえるのも嬉しいポイントです。

介護用椅子の購入時の注意点

介護用椅子を購入する際は、販売員や専門のスタッフに相談して購入すると、適切なアドバイスをもらうことができます。介護保険を適用して購入する場合、決められた事業者からの購入でないと保険給付の対象になりません。必ず事前に確認してください。

介護保険が適用されるか否かは使用者の要介護度によって変わり、購入する介護用品の種類によっても対象になるかどうか細かく定められています。一般的な介護用椅子は特定福祉用具に含まれていないことに注意が必要です。

介護保険適用時の手続きや注意事項

特定福祉用具を指定の事業者から購入し、その場でいったん全額支払った後、市区町村の役場へ払い戻しを申請します。申請には支給申請書や領収書、被保険者証、カタログ、印鑑などが必要です。詳しくはお住まいの役場へご確認ください。

介護保険を適用して特定福祉用具を購入する場合、基本的に同一種目の商品は一度しか購入できません

まとめ

介護施設では利用者に合った椅子を正しく使用することが大切です。介護椅子を適切に使うことで、利用者の負担を減らすだけでなくケガや誤嚥などのトラブルを防ぐことにもつながります。椅子によって健康が損なわれることがないように、どのような機能が必要かよく検討して介護椅子を選びましょう。